奈良県で土地価格が上がる不動産の特徴とは?今後はどうなる?

奈良県の鹿 奈良県

東京オリンピックへの期待で外国人観光客が増加しています。

そのため、今年の公示地価では、京都や大阪の土地価格が昨年比で20%以上も上昇していると話題になりました。

 

そうなると気になるのは、奈良県の土地価格ですよね?

しかし、過去5年間の奈良県の土地価格を見てみると、住宅地で2.0%の下落となっていました。和歌山県に至っては、1割以上も下落しています。

 

奈良県の公示地価(住宅地)の推移

(参考:国土交通省 地価公示)

 

そこで、奈良県の公示地価405地点を詳しく調べてみたところ、この5年間で10%以上も上昇している住宅地がいくつもありました。

同じ市内でも、上昇している地点と下落している地点の格差が広がっていたのです。

 

そのため、

「どこに買えばいいのか?」

「まだ上がるのか?今が売り時なのか?」

がわかりにくくなっているのが現状です。

 

この記事では、過去30年間の奈良県の土地価格を追いかけることで、

  • なぜ、奈良県の住宅地は、17年連続で下げ続けているのか?
  • この5年間で上昇している不動産の特徴は何か?
  • 今後の奈良県の土地価格がどうなるのか?

について、解説していきます。

 

奈良県の不動産市場が、どのように動いてきて、これからどのように動くのか、が理解できれば、今後の購入、または売却の役に立つはずです。

 

1、これまでの奈良県の土地価格の動き

最初に奈良県の過去30年間の土地価格の流れを追っていきます。

この大きな流れを知ることで、「どんな地域が下げているのか?」その理由がわかるはずです。

 

(1)奈良県の土地価格が、27年間も下げ続けている理由とは?

1989年の大納会で、日経平均は38,915円の史上最高値をつけ、これが株式市場のピークとなりましたが、不動産市場はもう少しあとの1991年(平成3年)が全国的なピークでした。

 

奈良県の公示地価(住宅地)もピークは平成3年で、その上昇率ははるかに高く、その分だけ激しく下落していきました。

 

 奈良県の公示地価(住宅地)は、平成3年ごろがピーク

奈良県の過去30年間の公示地価

(参考:国土交通省 地価公示)

 

それから、27年間の下落が続いています。

なぜ、これほど長い期間、下げ続けているのでしょうか?

 

その大きな理由は3つあります。

  • 不良債権処理と公共事業の削減で、不動産市場が崩壊
  • 家を建てる人が減った
  • 郊外に家を建てられるようになった

の3点です。

 

 土地価格が下がる理由①:不良債権処理と公共事業の削減で、不動産市場が崩壊

土地バブルの崩壊が崩壊して、金融機関が本格的に危なくなったのが1997〜1998年ごろでした。

 

経営破綻した金融機関
1997年・(11月)三洋証券

・(11月)北海道拓殖銀行

・(11月)山一證券

・(11月)徳山シティ銀行

1998年・(10月)長銀

・(12月)日債銀

 

これ以上、金融機関がつぶれてしまっては日本はヤバイ!ということで、現在の金融庁が作られ、貸出先を厳しく審査するようになりました。

その結果、経営が危ない企業に対してお金を貸すことを止める「貸し剝がし」が起きて、余計に景気が悪化しました。

 

金融機関の「貸し剝がし」と奈良県の公示地価の下落は一致している

奈良県の公示地価と貸出残高の推移

(参考:日銀 時系列統計データ検索サイト)

 

さらに、2001年には小泉政権が誕生して、「構造改革」という名の下に、公共事業費が一律10%カットされました。

その後も、年金や医療費などの社会保障費も増え続けているため、公共事業に回すお金がどんどん減らされていきました。

 

その結果、奈良県の年間に4,000億円以上あった行政投資額(公共事業など)が、2,000億円以下にまで減ってしまったのです。

 

奈良県の行政投資は、4,000→2,000億円まで激減

奈良県の公示地価と行政投資額の推移

(参考:国土交通省 地価公示 総務省統計局 行政投資実績)

 

 土地価格が下がる理由②:郊外に家が建てやすくなった

さらに、2000年ごろから、郊外に家がどんどん建てやすくなりました。

 

大店立地法で、ショッピングモールが簡単に建つようになった

ショッピングモールの駐車場

 

2000年に大店立地法(大規模小売店舗立地法)が成立して、イオンモールなどの大きなショッピングモールがカンタンに建てられるようになったのです。

  • 2004年4月:イオンモール橿原
  • 2006年7月:イオンモール奈良登美ヶ丘
  • 2010年3月:イオンモール大和郡山
  • 2013年9月:アピタ西大和

 

ショッピングモールがにぎわう反面、多くの商店街が廃れていきました。

高い地価の中心街に家を建てるよりも、郊外の安い土地に建てて、車でショッピングモールに買い物に行った方が便利ですし、欲しいものが手に入ります。

そのため、2000年以降の土地価格の下落がなかなか止まらなくなってしまったのです。

 

 土地価格が下がる理由③:家を建てる人が減った

2010年代に入ると、公共事業も横ばいになって、アベノミクスやオリンピック期待もあって、景気も多少は上向いているように見えます。

ですが、奈良県の土地価格は、ほぼ横ばいであまり恩恵を受けていないようです。

 

奈良県のこの30年間の土地価格と、持ち家(戸建て・マンション)の着工戸数を調べてみると、それまでは10,000戸を越えていた着工戸数が、1997年(平成9年)には8,000戸を割れ、その後は4,000戸台にまでに激減しています。

 

家を建てる人がほぼ半分に減ってしまった

奈良県の新築の戸数推移

(参考:国土交通省 地価公示 総務省統計局 建設着工統計)

 

その理由は、家を建てられる人が減っているからです。

 

働く人が減った(20年間で66.5万→59万人)

奈良県の就業者数(仕事をしている人)を調べてみると、1995年に66.5万人いました。

しかし、2000年から2010年にかけてで、65万人から59.6万人まで、ほぼ1割の減少をしています。公共事業が大きく減った時期と一致します。

 

奈良県の就業者数の推移

(参考:総務省統計局 建設着工統計 国勢調査 人口の労働力状態,就業者の産業・職業)

 

さらに、家を買う年代の30代人口は、2006年ごろまで増えていますが、2010年代に入ってからは、減っていく一方なのです。

 

奈良県の30代人口の推移

(参考:総務省統計局 建設着工統計 総務省 住民基本台帳に基づく人口))

 

そのため、住宅の着工戸数も増えず、土地価格も上昇しないのです。

 

 

つまり、

  • 公共事業が減って、働く人が減ってしまった
  • ショッピングセンターが増えて、郊外のどこに住んでも便利な生活ができるようになった

という理由から、市街地の土地に対する需要が減って、土地価格が下げ続けているんですね。

 

2、この5年間の奈良県の土地価格の動き

しかし、この5年間を見ると、全国的に土地価格が上昇に転じ始めています。奈良県でも一部の地域ではその流れに乗っています。

その特徴をここから詳しくみていきましょう。

 

(1)大阪への通勤で、生駒市・奈良市の駅周辺が上昇

過去5年間の公示地価(住宅地)の動きを見ると、

・奈良市、生駒市:3%以上の上昇

・橿原市、斑鳩町、香芝市:ほぼ横ばい

の5市町をのぞき、下落していました。

 

奈良県の過去5年間の公示地価の変化率

奈良県の公示地価の変化率の分布

(参考:国土交通省 地価公示)

 

生駒市と奈良市は、大阪市への通勤ニーズで駅前を中心に上昇しているようです。そのため、徒歩20分以上の地点から、徐々に下落傾向にあることがわかります。

 

駅からの距離で見たときの公示地価(住宅地)の上昇率

 5分以内5-10分10-15分15-20分20-25分25-30分30分以内
奈良市・生駒市13.3%5.2%3.6%4.0%2.2%-0.1%0.3%
その他市町村-3.4%-3.6%-3.5%-4.3%-3.9%-5.4%-5.6%
奈良市全体0.4%-1.5%-1.9%-2.1%-2.0%-2.5%-3.2%

(出典:国土数値情報ダウンロードサービス)

 

特に大和西大寺駅周辺の土地価格は、この5年で2割近く上昇している地点もありました。

逆に奈良駅周辺の土地価格は、あまり上がっていませんでした。大阪までの通勤時間が長いことと、大和西大寺駅周辺よりも土地価格が高いためでしょう。

 

全国的にも、通勤に便利なマンションへのニーズが、この数年で広がっています。全国の不動産価格指数を見ると、マンションだけが4割以上も上昇しています。

 

不動産価格指数

(参考:国土交通省 不動産価格指数(住宅地))

 

「職住近接」という言葉をたまに聞きますよね。共働きで子持ちの世帯では、保育園への送り迎えなども考えると、通勤に時間をかけてられません。

しかし、大阪に住むとなると、県民性も違いますし、地域に溶け込めるのか不安にもなります。

そのため、「県内で通勤に便利なところ」として、奈良市・生駒市に駅近物件に人気が集中しているのです。

 

(2)人口はこの5年で、約3%のマイナス

奈良県の過去5年間の人口の変化率

奈良県の人口変化率の分布

(参考:奈良県 市区町村別推計人口)

 

しかし、一部には駅近物件への人気が集中しているものの、奈良県全体で見ればこの5年間で約3%、4.3万人の人口が減っています。

大阪や京都へ移り住む人も多いため、全体的に減少傾向は続いています。

そのため、駅から離れた土地や郊外では、土地価格の下落が止まらない状況にあります。

 

3、オリンピック後の奈良県の不動産はどうなるのか?

このような状況の中で、奈良県の今後の土地価格に影響を与える要素が2つあります。

それは、

  • 2022年問題
  • オリンピック後の観光客数の変化

の2点です。

 

(1)2022年問題で、生産緑地が宅地に解禁になる

2022年問題とは、

「都市部にある農地が、宅地に解禁になることで、土地価格や家賃が下落するだろう」

と言われている問題です。

 

生産緑地

→全国に約3,989万坪、戸建てで約133万戸分の広さになります。

生産緑地が解禁になる2022年問題で、日本の不動産はどうなるのか?
生産緑地が解禁になる2022年問題によって、どのような影響が起こるのか?どこの市町村に多く分布しているのか?を解説します。

 

実は、奈良県でもこの生産緑地があります。奈良市や天理市、桜井氏など、かなり広範囲に広がっています。

奈良県の生産緑地の分布

奈良県の生産緑地の分布状況

(出典:都市計画区域、市街化区域、地域地区の決定状況)

 

1ヘクタール(ha)は、約3,000坪ですので、30坪の戸建てで100戸分になります。

赤のエリアは、100ha以上ある地域なので、奈良市では1万戸以上の家が建つ可能性があるのです。

 

ただでさえ、人口が減少して土地に対するニーズが減っているところに、農地から宅地へと転用する動きが増えれば、土地価格は下がっていくでしょう。

特に奈良市よりも南側では、人口の減り幅も大きく、地価も下落している状況なので、さらに追い討ちをかけるような形になります。

 

 各市町村の都市計画図を見ると、生産緑地の場所がわかる

では、「どこの農地が生産緑地なのか?」気になりますよね。

その場合は、市町村の都市計画図で検索すると、生産緑地の分布を見ることができます。

 

見やすい自治体とそうでない自治体がありますので、その点は根気が必要ですが。主な自治体のリンクを貼っておきます。

*「その他の地域地区」を選択すると生産緑地の表示がわかります

・奈良市

・生駒市

・五條市

 

(2)オリンピック後の外国人観光客数はどうなるのか?

オリンピック開催が決定してから、外国人観光客数が増加していますが、大阪市は東京に次いで2番目に外国人の延べ宿泊者数が多い都道府県であり、その恩恵をかなり受けていると言えます。

 

今回の奈良県の土地価格の上昇は、大阪への通勤需要が1番大きいです。

ということは、今後も観光客数が増える、または維持できるかで、特に生駒市、奈良市の土地価格にかなり影響が出てくるでしょう。

では、過去のオリンピック開催国のその後の観光客数はどうだったのか?というと、その後も堅調なことがわかりました。

 

オリンピック開催国の外国人観光客数の推移

 

オリンピック開催国の外国人観光客数の推移

(参考:国土交通省 観光庁 *PDFファイル)

 

そう考えると、今後も引き続き、大阪よりの奈良、生駒エリアでは、土地価格も堅調に推移するのではないでしょうか。

それ以外のエリアでは、生産緑地の影響の方が大きくなりますので、こちらの影響を検証すべきでしょう。

 

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