熊本県で土地価格が上がったエリアは?再開発で熊本市がすごいことに

熊本県

熊本県の過去5年間の土地価格を見ると、住宅地で0.4% のマイナスでした。

 

熊本県の公示地価の推移

(参考:国土交通省 地価公示)

 

この5年間に熊本地震がありました。

被害総額は4兆円を超え、現在も復興の途中にありますが、この2年間で復興工事も予定の半分が完了し、少しずつ復旧が進んでいます。

 

復旧工事の契約はほぼ9割メドがついて、約半分の工事が完了

熊本県の復興進捗状況

(参考:熊本県 復旧・復興の歩み 第2号)

 

そして現在、熊本市の再開発が進んでいます。

  • 2019年:中央区桜町に150店舗規模の商業複合施設が完成予定
  • 2021年:JR九州が熊本駅ビルを出店予定

と、中心部の風景もかなり変わり、今後の街の形も大きく変わりそうです。

 

そこで、この記事では、過去30年間の熊本県の土地価格を追いかけることで、

  • なぜ、熊本県の住宅地は、20年連続で下げ続けているのか?
  • この5年間で上昇している不動産の特徴は何か?
  • 今後の熊本県の土地価格がどうなるのか?

について、解説していきます。

 

1、これまでの熊本県の土地価格の動き

最初に熊本県のこの30年間の土地価格の流れを追っていきます。

この大きな流れを知ることで、「どんな地域が下げているのか?」その理由がわかるはずです。

(1)20年連続で土地価格が下落している理由とは?

熊本県の公示地価(住宅地)は、1996〜1998年(平成8〜10年)ごろになだらかなピークを打ちました。

東京でのピークは1988年(昭和63年)でしたから、8〜10年遅れてきた計算になります。

 

 熊本県の公示地価(住宅地)は、平成8〜10年ごろがピーク

熊本県の過去30年間の公示地価の推移

(参考:国土交通省 地価公示)

 

しかし、それから、ほぼ20年間の下落が続いています。

 

その大きな理由は3つあります。

  • 不良債権処理で、不動産市場が崩壊
  • 家を建てる人が減った
  • 郊外に家を建てられるようになった

の3点です。

 

 土地価格が下がる理由①:不良債権処理で不動産市場が崩壊

1997年の11月に山一證券が破綻をして、その後に北海道拓殖銀行や日本債券信用銀行などの一流金融機関が破綻を始め、不良債権問題が大きくなり始めていました。

 

熊本県の公示地価と不動産業向け貸出残高

(参考:国土交通省 地価公示) 日銀 時系列統計データ検索サイト)

 

この頃は、金融機関による「貸しはがし」が話題になってましたよね。

多くの会社がこの貸し剝がしによって倒産してしまい、借入れの担保としていた自宅などの不動産が競売に出されてしまいました。

 

さらに、2001年には小泉政権が誕生して、「構造改革」という名の下に、公共事業がどんどん減らされ、その流れは民主党政権にまで続きました。

 

その結果、年間に7,000億円以上あった行政投資額(公共事業など)が、3,000億円台にまで減ってしまったのです。

 

熊本県の行政投資額は、7,000億円→3,000億円台まで激減

熊本県の行政投資額

(参考:国土交通省 地価公示 総務省統計局 行政投資実績)

 

グラフを見ると、ほとんど同じ動きをしてますよね。

金融機関の貸出残高は、2004年以降に持ち直していますが、公共事業はその後も減り続けており、土地価格の下落が止まらないのです。

 

 土地価格が下がる理由②:郊外に家を建てられるようになった

土地価格が下がれば、買う人が出てきそうなものですが、なかなか買い手が出てこなくなりました。

というのも、2000年ごろから郊外に家を建てる動きが広がっていったからです。

 

大店立地法で、ショッピングモールが簡単に建つようになった

ショッピングモールの駐車場

 

しかも、同じ2000年に大店立地法(大規模小売店舗立地法)も成立して、イオンモールなどの大きなショッピングモールがカンタンに建てられるようになりました。

  • 1997年11月:イオンモール宇城
  • 2002年8月:ゆめタウン サンピアン
  • 2005年10月:イオンモール熊本

と、かなりの大規模なモールができるようになりました。

 

つまり、ショッピングセンターが増えて、郊外のどこに住んでも便利な生活ができるようになったのです。

そのため、市街地の土地価格がいくら下がっても、見向きもされなくなってしまったのです。

 

 土地価格が下がる理由③:家を建てる人が減った

熊本県の持ち家(戸建て・マンション)の着工戸数を見ると、それまでは11,000戸を越えていた着工戸数が、1997年(平成9年)には8,000戸、98年には7,000戸台にまで一気に減ってしまいました。

 

不良債権問題の前から、着工件数は低下

熊本県の新築の戸数の推移

(参考:国土交通省 地価公示 総務省統計局 建設着工統計)

 

では、なぜこれほど家を建てる人が減ってしまったのでしょうか?

 

働く人が減った(20年間で89.7万→83万人)

熊本県の就業者数(仕事をしている人)を調べてみると、1995年に89.7万人いましたが、5年経つごとに1万人近くの就業者が減っていきました。

 

熊本県の就業者数の推移

(参考:国土交通省 地価公示 国勢調査 人口の労働力状態,就業者の産業・職業)

 

人口の多い団塊の世代が退職を始めたのは、2007年ごろからですから、それよりも5年以上も早い時期から下げています。

つまり、働ける若い人が減ってきはじめたのです。

特に2007年ごろから、家を買う中心世代の30代の人口が本格的に減り始めています。

 

熊本県の30代人口の推移

(参考:総務省統計局 建設着工統計 総務省 住民基本台帳に基づく人口))

 

働く若い人が減ると、家を建てられる人も減りますよね。そのため、今後は家を建てる人はもっと減っていくことでしょう。

 

つまり、

  • 不良債権問題で、市街地の不動産が投げ売りされた
  • 土地価格は安くなったものの、ショッピングモールが増えて郊外の方が住みやすくなった
  • 家を買う人が減った

という理由から、市街地の土地に対する需要が減って、土地価格が下げ続けているんですね。

 

(2)上昇している地域の特徴とは?

ただし、市街地の中でも、全ての地域が下落しているわけではありません。

上昇している地点の特徴を見ると、熊本市のような大都市と、それ以外の中小都市では、ちょっと傾向が違うようです。

 

熊本市では、市内の再開発への期待が大きい

熊本市は、福岡市、北九州市に次ぐ第3位の人口を持つ都市なのに、市の中心部に大規模な商業施設がありませんでした。

そのため、市の中心部から郊外にお客さんが流れてしまい、2015年には県民百貨店も閉店するような状況でした。

 

一方で、福岡市や北九州、長崎、鹿児島、大分では、JR九州が「アミュプラザ」という駅ビル併設の商業施設を運営していますが、そのほとんどが過去最高の売り上げを示しており、かなり好調です。

 

その理由は、

  1. 店舗数が多い(150〜250店舗)
  2. ほぼ毎日、何かしらのイベントをやっている
  3. 若い女性にウケるようなオシャレな店舗づくり

の3点によって、常にお客さんを呼べるような仕組みができているからです。

 

ようするに、「イオンモールに勝てる魅力」があるからなんですね。

 

そして、熊本市にもいよいよ、イオンモールに勝てるレベルの商業施設ができます。

熊本城にすぐ近い桜町地区が再開発されて、150店舗以上が出店する商業施設ができるのです。

震災に見舞われて、復興の方に目が行きがちでしたが、同時並行で2016年から解体工事が行われ、2019年には完成が予定されています。

 

こんな感じの商業施設ができます

桜町再開発事業の商業施設イメージ

(参考:九州産交ランドマーク株式会社)

 

2019年夏頃の予定

桜町再開発事業の開業スケジュール

(参考:九州産交ランドマーク株式会社)

 

さらに2021年には、JR九州が熊本駅に駅ビルを建てて、アミュプラザを開店する予定です。これによって、熊本市の中心部には、かなりのにぎわいが戻るのではないでしょうか。

 

【商業地】熊本城近くの再開発期待から、「熊本市中央区下通1-3-7」では、5年で29.4%の上昇

赤、青、黄色のマークが、商業地の上昇率1〜3位の地点です。

再開発されるエリアの周辺の土地価格がかなり上昇しています。

 

【住宅地】熊本高校近くの住宅地「熊本市中央区大江6-13-10」では、5年で22.1%の上昇

赤、青、黄色の家のマークが、熊本市で上昇している地点です。それぞれ、

  • 赤色:熊本市中央区大江(22.1%)
  • 黄色:熊本市中央区水前寺(18.2%)
  • 青色:熊本市中央区水前寺(17.5%)

と、かなりの上昇率となっています。

 

大分県や愛媛県などでもそうですが、2013年以降のアベノミクス効果もあってか、県内の進学校のあるエリアでは、かなり住宅地が上昇しています。

文教地区としてのブランドイメージや、住環境の良さから見直される流れができているようです。

 

市区町村別に見ると、熊本市周辺での上昇率が高い

熊本県の市区町村別の公示地価

(参考:国土交通省 地価公示)

 

それ以外の市町村の土地価格を見ると、熊本市周辺での土地価格の上昇が目立ちます。

 

熊本市よりも土地価格が安く、郊外のショッピングセンターを使った方が生活しやすいと考える世帯では、熊本市の隣の自治体に家を建てて、そこから通勤する人も多いんですね。

その一方で、熊本市から離れた地域では、仕事を求めて熊本市に移住する人もいます。そのため、熊本市とその周辺の自治体に人口が集中する状況になっているのです。

 

熊本市とその周辺都市で、人口の増加が続いている

熊本県の人口変化率

(参考:熊本県 市区町村別人口、世帯数)

 

2、これから熊本県の土地価格はどうなるのか?

このような状況の中で、熊本県の今後の土地価格に影響を与える要素が2つあります。

それは、

  • 熊本市の再開発事業
  • 2025年問題で公共事業がさらに減る

の2点です。

 

(1)熊本市の再開発事業

先ほど触れた熊本市の再開発は、かなり期待が持てるのではないかと思います。

ただし、福岡市は別格として、それ以外の県庁所在地での駅前の再開発では、土地価格が上昇する範囲はあまり広くありません。

せいぜい駅から1〜2kmぐらいの範囲でしょう。

 

また、郊外に土地が建つ流れは、なかなか変わりませんし、この5年間で熊本県の人口は5万人以上減っています。

この5年で土地価格も人口も上昇していない地域では、今後も下落していくことになりそうです。

 

(2)2025年問題で、公共事業費がさらに減る

2025年問題とは、

「人口の多い団塊の世代が、75才以上の後期高齢者になることで、社会保障費が一気に増えて国の予算を圧迫する」

という問題です。

 

日本の社会保障費は、2025年に121.3→140.4兆円へと増える

日本の社会保障費の推移

(出典:2040年を見据えた社会保障の将来見通し(内閣府) 社会保障費用統計(国立人口問題研究所)

 

これまでも、社会保障費が増加してきたことが理由で、公共事業がどんどん削られてきました。

その社会保障費がさらに増えるわけですから、熊本県の公共事業は、今後さらに減っていくことになるでしょう。

 

社会保障費の増加に合わせて、公共事業も削られてきた

社会保障費と行政投資額の推移

(参考:国立社会保障・人口問題研究所 総務省統計局 行政投資実績)

 

そのため、公共事業に依存している地域では、今以上に住みにくくなるでしょう。土地価格の下落傾向も続くのではないでしょうか。

 

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